中二のとき医者の息子と学校をさぼってタクシーで、初めて名画座に行き、見た映画が「いちご白書」と「Let It Be」だった。

リベラルに憧れていた僕は「いちご白書」に涙してジョン・レノンの「Give Peace A Chance」に感激した。それに反して「Let It Be」は退屈な映画だった。長髪もロックも不良の象徴だった。

中三のとき突然Beatlesに目覚めた。初めて買ったLPは「Rubber Soul」だった。初恋の少女に「Michelle」を重ねた。こづかいの少なかった僕はお年玉でステレオカセットデッキを買い、友達からBeatlesを借りて録音した。「Let It Be」にレコードで再会した。感動した。部屋にBeatlesのポスターを貼った。髪を伸ばした。

レコードプレイヤーが壊れても、捨てられなかったLPレコードを引越のために泣く泣く処分した。Beatlesのおかげで、高く買い取ってもらえたが、淋しかった。

iPodを買って、また音楽を聴き始めた。郷愁にひたるのが嫌で、昔の曲は聴きたくなかったのに、CMで流れた「Across The Universe」のフレーズが頭から離れず、とうとうAmazonで「Let It Be」のオリジナル盤を買っしまった。

出張の新幹線の中で、iPhoneで「Let It Be」を夢見ごこちで聴いている