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開発秘話シリーズ その7


前回の続きです。


音作りは大変だった。私一人ではとてもできないので急遽増員された。パイプオンガンの設置されたホールや大学を回り、まずは本物のサンプリングから始まった。


パイプオルガンのサンプリングはどうしたら良いのか。録音エンジニアと試行錯誤の繰り返し。録音用にB&K(ブリュエル・ケアー)の無指向性のコンデンサーマイクB&K4006、スチューダーのコンパクトなアナログミキサーを買った。マイクは素直で高感度、ミキサーは低ノイズで運びやすかった。パイプを狙うために高さ3mまで伸びるストレートマイクスタンドも必要だった。


サンプリングは全国のホールや大学の講堂、教会で行った。当然モニタールームがないので録音中は声も出さずじっとしている。空調はノイズが気になるのでいれない。冬は寒い。夏は暑い。そして莫大なパイプ数。録音は1ヶ所当たり数日かかったが、オルガンを触れるのは楽しかった。


パイプオルガンは、音栓を組み合わせて音を作るので1つの音栓の1キーの音量は意外と小さいのだった。そして厄介な音が録音の邪魔をした。


パイプオルガンはパイプに風を送りこんで音を出す。風を作るためにモーターを回す。サンプリングの邪魔をするのはこの風切り音とモーターの振動音だった。


空調は止められたが、モーターを止めるわけにはいかない。止めたら音が出ないのだから。


録音はそのまま行い後で加工することになる。


表から見えるパイプはごく一部で、裏には数千ものパイプがところ狭しと並んでいる。


パイプオルガンの音栓にはミクスチュアと呼ぶ複数のパイプが同時に鳴る音栓もある。この音色は音量が大きい。


また、リードのついたトランペットなどと命名された音色も音量が大きい。


私の好きな柔らかいフルート系の音色が小さい。また、高音になるほど小さい。音程によって、16フィート、8フィート、4フィートなどと音色名が付いている。2フィートなどになるとそれだけでは、か細い音だ。


また音量が変えられないので、スウェルボックスという仕組みがある。


木製の箱の中にパイプを並べ、箱のふたを開閉することで音量調節をしている。


【開発秘話シリーズ】

その1:【起業日記850日目(火):SY22とは何だ?】

http://kurakakeya.livedoor.biz/archives/52187157.html

その2:【起業日記852日目(金):電子ピアノの音作り】

http://kurakakeya.livedoor.biz/archives/52187388.html

その3:【起業日記853日目(月):ピアノのサンプリング】

http://kurakakeya.livedoor.biz/archives/52187406.html

その4:【起業日記854日目(火):音作りは試行錯誤の繰り返し】

http://kurakakeya.livedoor.biz/archives/52187483.html

その5:【起業日記855日目(水):風呂屋のピアノとは?】

http://kurakakeya.livedoor.biz/archives/52187499.html

その6:【起業日記876日目(火):電子パイプオルガンの音作り】

http://kurakakeya.livedoor.biz/archives/52189252.html


2021/05/26